氷 枕(ひょうちん)に かうべ埋めて 夕されば われをめぐりて 蚊帳釣らせけり |
♥ 夢うつつ 氷 枕 の 水音に 秋の陽射しが 天井に揺れ |
添い寝する 母は夜中に わたくしの 氷 枕 を 優しく替える |
♥ 久々の 氷 枕 は 懐かしく 臥せば故郷の 波の音する |
冬日さす 氷 枕 の ある床は 家族の思い 凝縮しており |
寝そべって 氷 枕 に 扇風機 開き直りて 読書楽しむ |
繰り返し 代える 氷 枕 からからと 頭の下に せせらぎ流れる |
♥ 病める子と 一日(ひとひ)ぼうぼう 過ごしたり 氷 枕 を 替えるなどして |
水 枕 ゆらりと揺れて 途切れたる 夢モノクロの 母が佇む |
頭をふれば 水 枕 の中 たまゆらの 氷と水の 話ごゑする |
真夜中の 霧立ち込める中 薬局へ 水 枕 買い 走って帰る |
寒き夜に 氷 枕 を 入れ給ふ 母が温さを 思ひけるかも |
川の字を 離(さか)る父なり 鯉魚ひとつ 沈めて冥き 水 枕 かな |
♥ 母さんが 氷 枕 して 時間が止まった 父とぼく |
水 枕 に 目を閉じおれば 谷あいを 走る車の 音の寂しさ |
♥ 氷 枕 に 頭痛をゆだね 目をつぶる 月をちぎって 食べてしまおう |
♥ 寒紅の 色深くして 水 枕 しわぶき染まり 寝ても覚めても |
♥ 後頭部 ぬるめに揺れる 水 枕 ゴムの香放つ 乳房と見立て |
寝返りを うつたび夫の 水 枕 ごぼごぼ氷の 動く音する |